松竹の映画館クーポン券が一枚、手元にあった。
期限は2019年3月31日、つまり今日だったので、自宅近くのMOVIX川口という映画館へ足を運んだ。
『グリーンブック』にするかどうか直前まで悩んだが、『翔んで埼玉』を観ることに決定。
結果的には大変満足だった。
映画の冒頭で真っ先に現れたのは「埼玉県 川口」という地名。
東京と埼玉の境界。私が今まさに映画を観ているこの地のことである。
映画の中では、その川口に「関所」が設けられている。
通行手形を持っていないと関所を通ることは許されない。
関所の向こう側「東京都」は、高層ビルが立ち並ぶ優雅で高貴な大都会エリア。
関所のこちら側「埼玉県」は、見渡す限り荒れ地が広がる低俗で不潔なド田舎エリア。
東京に住む貴族たちにとって、「埼玉」はその地名を口に出すのもはばかられる不浄なもの。
埼玉出身者は「埼玉県人」と呼ばれ、蔑まれ、虐げられ、ボロボロの服を着せられ、掘っ立て小屋に住まわされ、「そこらへんの草でも食わせておけ」と言われる存在。
密かに東京都内に紛れ込んだ埼玉県人は、取り締まりの際に機械でピピピッと見分けられて「貴様、埼玉県人だな!」と捕えられる。また「本当に埼玉県人でないというならばこれを踏んでみせろ!」と、草加せんべいによる踏み絵にかけられてしまう。
なんと残酷なことに、その草加せんべいには「シラコバト」の絵まで描かれているのだ。シラコバトは『埼玉県民の鳥』として指定されている、埼玉県内ではメジャーな鳥である。
俺も思う。
埼玉県出身の人はそれを踏めるわけがない。
絶対に。
いやー、まったく、痛快だ。
「埼玉県人」である我々観客たちも、なぜか笑いが止まらない。
だが東京都民も決して安心して観てはいられない。
東京都内だってエリアによってランク分けされており、
田無
八王子
狛江
町田
西葛西
あたりは、かなり低い扱いを受けている。
「西葛西って千葉だと思ってたわ~♪」ってな感じだ。
俺の元上司が西葛西の出身だったっけなー・・・。ジワジワくる。
終盤、埼玉軍と千葉軍の決戦シーンでは互いに「地元出身の有名人自慢」が始まるのだが、千葉軍が繰り出した有名人の中では
小倉優子(茂原)
小島よしお(稲毛)
あたりが、千葉大学出身の私は耳慣れた地名にジワジワきた。
一方の埼玉軍の方からは
反町隆史(さいたま)
竹野内豊(所沢)
も飛び出す。
ビーチボーイズじゃねーか。Forever Your Loveじゃねーか。二人とも海無し県の出身だったのか。世代的にジワジワである。
映画の中では関東地区の全ての都県が登場し、どの都県も漏れなくディスられているので、埼玉に土地勘のある人だけでなく、あまり土地勘の無い人でも楽しめる内容になっていると思う。
個人的に最高の萌えポイントは、麻生久美子さん演じる「千葉県出身で物腰穏やかな清楚系の美人ママ」が、『チバラキ』という単語を聴いた途端にヤンキー丸出しでブチ切れ始める場面だった。
今、軽く調べたところ
埼玉県の人口:715万
千葉県の人口:614万
つまり、両県あわせて日本の人口の約1割。その人達がこぞってこの映画を観てくれるだけでも、興行としては大成功だろう。そしてこの映画はきっと大成功するぞと確信できる、最高のエンターテインメント作品として仕上がっているように感じた。

